死者と生者、
ふたりきりで埋葬。
八月七日 日曜日




にちようびにうめられて、










































この色はね、俺は汚くて汚くて大っ嫌いだったんだ。
だけど今は、そうでもないよ。だってきみが好きだと云ってくれたから。毟って捨ててしまおうと思っていたこれを、じゃあキレイにしてやろうじゃないかって気になったんだ。






ジープは走りつづける。大きな尖った石ばかりが転がるあぜ道を、過去へ向かって。
そろそろ夜明けのはずだった。迫り来る昨日が、明日を追い出そうとしているはずだった。


「……あれ、じゃあ“今日”は何処にあるんだろうね」
「俺が知るか」
「イザークは知ってるじゃないか。イザークは昼と夜、ふたつのいのちを生きているのに」
「貴様の居ない今日など意味がない。だから云っているだろう。逃げてやると」
「ジープで逃げ切れるものなのか?」
「―――さぁな」


ぎゅぎゅぎゅ、変な音を立てて、イザークはハンドルを左に切った。いつの間にかあぜ道の両端は崖になっていて、右下には明日、左下には昨日が見える。
急に切られたハンドルの反動で、荷台が開いた。慣性の法則に従って冷蔵庫が振り落ちる。あんなにイザークが大切にしていた冷蔵庫が。だけどコードは切れることなく冷却装置ごと飛んで行ったので、アスランはすこし安心した。これでイザークの願い通り、あの中はつねに冷やしておくことができる。


「落ちた」
「良いんだ。ほんとうは、もうとっくに腐ってる」
「ずっと思ってたんだけど……」
「なんだ」
「ちょうどひとがひとり、入る大きさだよな」


四肢を折り曲げて、まるで祈りの体勢で、その願いごと凍らせるためにあるみたいな大きさだ。


「そうだな。お前よりはすこしばかり、躯のちいさな人間が、無理なく入る大きさだ」
「そしてこのジープは、大きなおとながふたり分」
「その通り」


記憶を逃げるジープが、夜明けの空へ飛び込んでいく。
ああそうだ、俺はこの色を、イザークの腕の中で見ていたはずだったのに。
アスランの呟きは、切る風の隙間を縫ってイザークの耳へと届く。その声に、イザークがすこし笑った気がした。


「思い出したよ、イザーク」
「云っただろう。貴様はずっと覚えていたんだ。忘れることが下手な貴様が、ただひとつ忘れたことが思い出し方なんて。……笑わせてくれる」
「忘れたかったんだ、だから忘れたまでだよ」
「それでも俺は貴様を忘れないさ」
「知ってるよ。だから忘れることができたんだ」


お前が覚えていてくれるから。だから安心して過去を封じ込めることができる。
ふたたび あか が視界と記憶を埋め尽くしたけれど、もう恐怖は襲ってこなかった。





月が落ちる。夜が落ちる。同じ速度で、おんぼろジープは過去を落ちて行った。















血の滲んだ骨を拾い集める。
それが義務。それが償い。