喧噪を綺麗に縫って届いた声に、スザクの怒りはジノの頬僅か五センチの隙間を空けて止まった。
「―――ルルーシュ……!」
割り込んだことを責めるでもなく、むしろ待ち詫びたように焦がれた声は、一体誰の口から発せられたものだっただろう。
四重奏
-quartetto-
「スザク、落ち着け。落ち着くんだ」
場に相応しくないほどの冷静さを纏ったルルーシュはゆったりと生徒会室の中に歩を進め、腕を振り上げたままのスザクに向き直ると、その頬を両手で包んだ。
スザクの火照った頬の温度が伝わり、ルルーシュの無機質だった表情にふっと優しい笑みが灯る。
「―――お前は頑張ってるよ、スザク」
「ルルー、シュ……」
「大会に向けて、気が詰まることもあるだろう。お前は指導側には向いてないからな。だがここで暴れてしまっては、いままでの苦労と努力が水の泡だ。副将とエースが暴力沙汰で出場停止なんて、笑い話にもならないぞ」
片手だけを浮かせ、ぱちぱちと軽く頬を叩く。
落ち着いた声のルルーシュの説得に、ふっと場の緊張が溶けるのをだれもが感じ取った。一番ほっとした様子のリヴァルはルルーシュの姿を認めた時から既にスザクから離れ、ルルーシュにその場を譲っていたし、何事かと集まり出していたギャラリーたちは、ルルーシュの登場と共にもう大丈夫とばかり散り始めている。
そんな中ルルーシュに頬を包まれたスザクは、段々と硬直していた身体を解して行った。
「う、ん……ゴメン」
呟きと一緒に、解かれた掌がぱたりと落ちる。
「何が?」
「……君たちの仕事の邪魔して、生徒会室なんかで暴れて……リヴァルも、あんなに止めてくれたのに、ゴメン」
「ああ。それから?」
「……」
まるで容赦のない、とリヴァルは思ったが沈黙を貫いた。この場はもう任せるつもりだった。
スザクは一瞬だけ表情を辛そうに歪ませて、けれどすぐに平常に整えるとちらりとジノに視線を向ける。
ジノは唇の端だけを軽く上げて、平坦な様子でルルーシュとスザクの遣り取りを見守っていた。
「……ジノも。ゴメン、八つ当たり……だった、の、かも」
「かもってお前な」
「だって、」
スザクの中では、ジノに対する怒りの正当性を失ってはいなかった。ルルーシュが何処まで把握しているのかは判らないが、暴れて問題を起こす一歩手前だったことを差し引けば、間違った主張ではないことを判って欲しかった。
確かに暴力に訴えるのは良くない。だが、謝るつもりがあるのはそこだけだ。
「良いよ、ルルーシュ」
「ジノ」
浅い息を吐き出しながらスザクに許しを与えたジノに、ルルーシュがスザクに合わせていた視線を上げた。その声にスザクの肩がぴくりと反応する。
「私もスザクを怒らせるようなことを云ったんだ。怒らせようと思ったわけではないんだけど……スザクにとっては同じことだな」
「ふむ……都合良く仲直りとは行かない感じか」
納得したように頷くルルーシュに、むしろソレをお前が云うのかよと突っ込みかけたリヴァルだったが、呆れに溜め息を吐くに留めた。ジノとスザクの話は、詳しいところは置いてけぼりだったが、なんとなく察してはいる。大体、部活の話だったのがいつの間にかルルーシュの名前が出ている時点で方向性はおかしかったのだ。
つまり、咄嗟にルルーシュに緊急呼び出しを行った自分の判断は間違っていなかったと云うことだろうが……ここまでずばっと直球にモノを云うルルーシュには、その豪胆さにいっそ呆れる他ない。
だがジノは、ははッと爽やかに笑っていた。何がおかしいのかリヴァルには全く判らなかったが。
「行かない感じだな。スザクと私では、優先順位が違うんだ。相互理解は難しい」
「それはつまり、理解はしてると云うことだと思うが……」
「―――確かに」
「……スザク?」
黙りこくっていたスザクが声を発したので、ルルーシュが頸を傾げた。
「優先順位、ね。やっぱり君にとっての弓道は、その程度ってことなんだ。良いよルルーシュ、もう判った」
「……何が?」
最初はジノに対して語りかけていたスザクは、途中からは視線を外しルルーシュに向き直る。
「理解し合えないってことを、理解した。だからもう良いや」
「良いって?」
「こんな奴に、真剣に怒った僕が莫迦だったんだ」
納得したように空笑いの表情をしたスザクは、それで満足したように先を続ける気がないようだった。ジノもそれで構わないのか、困ったような表情だけしているが実際に困惑しているわけではなさそうで。
眉根を寄せたルルーシュは、溜め息を吐いて腕組みをした。そして視線だけで背後を睨む。
「リヴァル」
「……ハイハイ。ジノがルルーシュの顔見たいってここに居座ってたところに、スザクが怒鳴り込み。部活に出て団体行動しろっつースザクの主張に対して、ジノが面倒だと暴言。後は知らね、二人の問題」
「ほぉ……」
非常に簡潔なリヴァルによるまとめに、ルルーシュは考え込むように顎に手を当て、スザクは何かを諦めたように肩を落とし、ジノは感心していた。
「簡単に云うとそんなところか。でも私は、暴言のつもりはなかったんだが」
「や、アレは暴言です。部外者の俺からも、どー見ても」
「そう云えばリヴァルは私が悪いって云ってたなぁ。つまりアレか、ルルーシュを五分で呼んだのはリヴァルというコトだな!」
「その辺はどーでも良いけど」
投げ遣りなリヴァルの返事に、スザクが僅かに反応を見せてリヴァルに視線を向けていたけれど、リヴァルに思い当たるふしはなかった。
「なんだ、スザク?」
「……ううん、なんでもない」
ふるふると頭を振るスザクはけれど何かを云い掛けて止める素振りを見せたので、リヴァルは突っ込んで聞くべきかどうかを迷う。だがその答えを出す前にルルーシュが「スザク、」と声を掛けた。
「……なに、ルルーシュ?」
ゆるりと顔を上げたスザクは、ルルーシュの云うことには大人しく従う様子だった。
だがルルーシュはそんなスザクを一度だけ見遣り、「それからジノ」と今度はジノに呼びかける。
こちらも忠犬よろしく素直に笑顔でルルーシュに近付く。
ルルーシュはその様子を実に満足そうに微笑んで見守り、ジノに「ちょっと屈め」とまるで誘うような声音で命令し、そして―――
距離の近付いた二人の頭に、両手でゴウン!と凄まじい拳を落とし、ついでとばかりにふたりの頭を頭突きさせた。
「―――莫迦かお前らは」
「………すげー音したないまの」
思わずリヴァルが感心して呟いてしまったほど、ルルーシュにしては破壊力が大きかった。不意を突かれたせいもあるだろうが、ジノはしゃがんで頭を抱え込んでいるし、石頭のスザクでさえも叩かれた場所を押さえてうううと呻いている。
鳩尾のような良いポイントに入ったのか、単に気持ちが籠っていたためか。不思議とルルーシュの手には全く影響はなかったようで、ルルーシュは涼しい顔をしてふたたび腕を組んでいた。
「これで両成敗だ。ここには俺たちしか居ないし、単に仲間内の言い争いということにしておいてやる。ここまで来たら俺とリヴァルで仲裁役を務めてやるから、徹底的に相互理解とやらに励んだら良い」
「「「ええ!」」」
ブーイングの声が三人から同時に上がったが、ルルーシュは全く意に介さない様子でソファに悠々と腰掛けた。優雅に足を組む様を何となく見送ってから、リヴァルが口を開く。
「俺たちしか居ないって……随分騒いじまったし、人集まってたはずだけど」
「さぁ、知らないな。俺が部屋に入るとき、確かに人混みはあったかも知れないが、俺のお願いに皆素直に退いてくれたよ。何があったのか尋ねてみたが、何も見てないし、聞いてないと云っていた」
「……左様で」
恍けるルルーシュに今更驚く人間など、この面子に居るはずもない。それでも反応は三者三様で、呆れるリヴァルと感心するジノと、苦虫を噛み潰したような顔になるスザクの対比はいっそ見事なほどだとルルーシュ本人は思った。
だがこれは処理済みの話だ。他の仕事は山積み、時間があるわけではない。もっと建設的に話を進めるつもりで行動に出てやったので、とりあえず先に進めようとルルーシュは顎を上げて部屋を見回した。
「さて……まずはジノ」
「は、はい!」
自然細めた眸で呼んだ名に異様に反応したジノは、背筋をピンと伸ばして敬礼のポーズを取った。だがそれに突っ込みを入れる暇があるわけではないので適当に流す。
「お前、何故こんなところで油を売ってるんだ」
「ルルーシュと全然顔を合わせてないし、顔が見たいなぁ〜、なんて……」
「俺は云ったはずだな、部活に精を出して来いと」
「でもこんなに会えなくなるなんて聞いてない!」
「一度約束したことを守り通さない奴が屁理屈を捏ねるな」
「とは云っても、私はそもそも向こうから勧誘を受けて入った准部員扱いだ」
「しつこく頼まれたからその通りやってやる、だから自分は特別だって?」
はッ、と嘲笑したルルーシュには愛情の一片も見えなかった。
ジノの云い分に顔を顰めていたスザクも、ここに来てあれ、と頸を傾げている。
「それでも数あるクラブの中から弓道部を選び、仮令一度の校内戦でも活躍して部員たちに夢を見せたのはお前だろう。部員たちに対し責任があるはずだ」
「う……」
納得が行かないように唇を窄ませたジノは、しかしルルーシュの真剣な瞳に反論まではできないようだ。詰まったように唸るような声を出して、小さくなっている。
「……私は、皆で何かを成し遂げるとか、そういうことが良く判らないんだ。ひとりでやった方が早いし、楽じゃないか」
「うえー、天才故の悩みってヤツ?」
「茶化すな、リヴァル」
思わず口を挟んだリヴァルを横目で睨んだルルーシュが諌める。
しかしリヴァルはその視線を受けて尚、茶化してるわけじゃなくて、と頸を振った。
「凡人からの意見を云わせてもらうと、いけ好かない奴だって感想になって、やっかみ買うだけだぜ。そんなの損だろ。折角実力があるんだから、とことん利用しておけよ。その方が人生捗るから。別に青春しろって云うわけじゃないけど、ある程度周りに合わせておいた方が、絶対楽だし愉しいぞ」
妙に饒舌になったリヴァルに、しかしジノはちゃんと聞く気はあったようで、そんなものか?と頸を傾げた。そこに、そんなものだろとリヴァルが頷く。
「弓道部の奴らからすれば、全然練習に参加しないチート並の奴のおかげで取った優勝なんて、いくら周囲に羨ましがられても本人たちはちっとも嬉しくねーよ。でも仲の良い部員だったら素直に歓ぶし、お前のおかげだって賞賛の嵐になるぜ」
「……まぁ、一理あるな」
リヴァルの説明に頷いたルルーシュを見て、ジノも漸く納得したようだった。
「そうか……」
「―――スザクは?」
「…え?」
一人成り行きを黙って見ていたスザクに、ルルーシュが唐突に話題を振る。驚きに眸を丸くしたスザクの瞳に、先ほどまでの怒りは既に色を失っていた。
「ジノは、弓道部に必要だと思うか?」
息を呑む気配。
それはスザクからもジノからも感じ取れて、リヴァルはルルーシュを見下ろした。浅くソファに腰掛け、腕と足を組んだルルーシュは不敵な笑みを浮かべていて、けれど瞳だけはやけに優しくスザクを見守る。
その優しさに溶かされたように、スザクが力無く頷いた。
「う、ん……」
「―――何故?」
「それは……やっぱりジノは強い、から。主将も忙しいし、僕だけじゃ部員までは支えきれないけど……ジノが居て、部員たちのことも見てくれたら、優勝も夢じゃない気がする。誰もジノに教えたりできなくて申し訳ないけど……ジノが居た方が、士気は上がるし」
良い意味でも悪い意味でも。
今更本人に気を遣って心の中だけで付け足した台詞は、ルルーシュにはちゃんと伝わっただろうか。
たまにジノに視線を向けながらのスザクの訴えに、ルルーシュは静かな声で頷きながら立ち上がった。
「そうだな。お前が副将になんてなってしまったときは、いつも自分のことばかりのスザクが部員をまとめたりできるのかと心配だったが。そう考えるようになれたなら、きっともう大丈夫だ」
よしよしと頭を撫でたルルーシュに、スザクはそうかなと照れたように笑いながら、けれど振り切ったりはせず大人しく受け入れていた。
良いのかコレ、とリヴァルは厭な予感がしてちらりとジノを振り返ったが、ジノは指を銜えて「良いなぁ」と羨ましがっている。どうやら本気のようだ。
安心したような、若干後輩の行方が心配なような。複雑な気持ちで三人を見守った。
やがてスザクが完全に落ち着いたことを確信した頃、ルルーシュが顔を上げる。
「―――ジノ」
「うん、判ってる。でもちょっと待ってくれ。私にも、納得のできないことはあるから」
「まぁ、そうかも知れないが……」
唇の上に軽く握った拳を乗せ、視線を斜め上へ投げたルルーシュは、何かを考え込んでいる様子だった。どう云い包めるかを迷っているのかとリヴァルは思ったが、ルルーシュは何かを決意したような顔をしたかと思うと、ジノにぼんやりと視線を合わせる。
「……でも、ジノの真剣な姿、カッコいいと思うのに……」
「「へ?」」
ルルーシュの突然の吹っ飛んだ発言に、ジノ本人とリヴァルが素っ頓狂な返答をする。スザクは、長い睫をしぱしぱとはためかせ、ルルーシュを穴が空くほど見つめていた。
「ジノが唯一ちゃんと出た校内戦、スザクに誘われて見に行ってたんだ。俺は弓道について詳しいわけじゃないが、綺麗なフォームだったし、スザク以外にも目立つ奴が居るんだなと思って覚えてる」
「そ、そうなのか」
一年が仮入部から正式に所属することが決まる頃だから、まだ春先。ジノとは友人にもなっていない頃だった。
副将という役職に戸惑っているスザクを何とか励まそうと、ルルーシュはその頃こまめに弓道部に顔を出していた。ジノの存在をきちんと認識しているわけではなかったけれど、朧げにその真っ直ぐ伸びた上背を思い出す。
背こそそれなりに高かったけれど、まだ成長期特有の少年らしい華奢さが残っていたような気がする。いつの間に、こんなに大きな体躯まで成長したのだろう。なんだか成長を歓ぶ兄のような気分で、いま一度ジノを眺めた。
「ジノが指導側に回ったら、百人力だと思うぞ。指導とまでは行かなくても、軽いアドバイスだけでも良いんだ。実力は誰もが認めていることだから、部員たちもさすがに聞くだろう。もし反発してくるようだったら、これからは姿勢を改めることをちゃんと伝えて、スザクからも云ってもらえ」
「え、」
「な、スザク?」
「う、うん……。もちろん、それが僕の仕事だし」
戸惑いながら、それでもスザクはしっかりと頷いた。それにほっとルルーシュが息を吐く。
「ほら、な。だからジノも頑張って、仲間に揉まれて来い。俺もこれでも生徒会役員だから、うちの学園の活躍を聞けるのは嬉しいし」
「そ…そうか」
「ああ」
「じゃあ、頑張る」
吹っ切れたように笑顔で頷いたジノは、そのままスザクにも笑い掛けた。
「それに、スザクも必要だと云ってくれたからな。スザクがそう云ってくれるのなら、私も協力しよう!そうだな、責任に押し潰されそうなスザクを助けるためと思えば、部活も無駄だとは思わない」
「…え、」
そうジノに面と向かって告げられ、スザクは意外そうに顔を上げた。それににんまりとジノが笑って繋げる。
「だって友人だからな!」
ジノはいつもの調子でバンバンとスザクの背中を叩き、それに合わせてスザクが咳をしていた。
「あの……君は、それで」
「良くはないさ。私も結構ひどいことを云われたからな!スザクも、私を完全に許したわけじゃないだろう」
「う、ん…でも、」
「大丈夫。それなら、撤回させてみせるまでだ」
にっかりと笑ったジノの笑顔は、それでも満面というわけにはいかなさそうだった。それをさすがのスザクも敏感に感じ取り、けれどゴメンという一言を喉で抑える。年下に気を遣わせてしまったのは、昨日のナナリーとロロを入れてもう三度目だということを思い出して、そんな自分を恥じた。
その代わりに、「また生意気云って」と軽口を叩く。
ジノもその反応に安心したように、一度トンと肩を叩いて手を止めた。
ふたりの中で未だ蟠りは残っていようと、それでも一応表面的には仲直りというように見えたので、ルルーシュもリヴァルもほっと一息吐いた。
「……格好良いコトを云うじゃないか」
「え、ホント?私、格好良かったか!?」
嬉しそうにジノがルルーシュの周りをうきうきと跳ねる。
それをルルーシュは優しさを含む呆れた瞳で、仕方ない奴だと見守っていた。
「ああ。そこまで云うんだったら、俺がどうとか莫迦なことを云ってないで、真面目に練習出て結果を出して来い」
「莫迦なことではないと思うけど……」
「―――何か云ったか?」
凄みのある笑顔に、さすがのジノも「なんでもない」と頸を振る。
「……あ、そうだルルーシュ!私頑張るから、ご褒美をくれ!」
「ご褒美?」
「ああ。大会、応援に来てくれないか?」
「……応援?俺が?」
ジノの突然のおねだりに眸を丸くしたルルーシュは、何故と頸を傾げる。
「そう。ルルーシュが来てくれるのなら、私だけじゃなく皆二倍は頑張るぞ。なぁスザク!」
莫迦なことを、と思ったが、話を振られたスザクが頸を傾げたので、ルルーシュは口を噤んだ。
「……何云ってんの」
呆れたような低い声で応対したスザクを見て、ルルーシュがほら、とペースを取り戻してジノに向き直る。
「ほら、スザクは違うと云、」
「四倍は固いね」
「…は?」
それこを何を莫迦なことを、と云いたくても、そのスザクの表情はとても晴れやかで。―――それ以上を喉に詰まらせたルルーシュを置いて、ジノが騒ぐ。
「さぁ、そうと決まったら練習に行こう!元々ルルーシュの顔を見たらちゃんと部活行くって、リヴァルとも約束していたしな!ほら行くぞスザク!」
「……本ッ当に、君は調子が良いんだから……」
「え?何か云ったか?」
いまにもドアに手を掛けて飛び出そうとしているジノが振り返ったが、スザクはふるふると頸を振った。
「……なんでも。じゃあルルーシュ、リヴァル。騒いでゴメンね。今度埋め合わせするから」
「……そう云うなら、是が非でも優勝もぎ取って来い。俺はそれで良い」
ルルーシュの判りにくい激励に、スザクがきょとんと頸を傾げる。だがその意味をスザクが咀嚼しきる前に、リヴァルがルルーシュの言葉を足した。
「そうそう。俺ら生徒会にとっては、それが何よりの活源」
「そういうわけだ。できる限りはサポートしてやるから、練習に集中して来い」
「……うん!あ、ルルーシュ、」
「なんだ?」
破顔したスザクが、ちょっととルルーシュの袖を引っ張ったのでルルーシュも頸を傾げる。
「応援、来てくれたら僕も嬉しい」
「……そうか」
「あ、リヴァルも良かったら来て!」
「俺はついでかよー」
「そんなことないけど、あの、じゃあジノが煩いから行って来る。じゃあね!」
バタバタと騒がしい足音を抑えもせず、嵐の如くふたりは生徒会室を去って行った。