Memorandum

日々徒然 とか 連絡事項 とか。ネタバレを全く考慮していないのでご注意を。
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アフターゼロ

原稿中こそ関係のない話が書きたくなる病発症中。

オフで出したゼロレク後の踊り子ルルーシュの話(7 Years Warと11 Hours Limit)、
あれはあれで完結だとは思っているものの、
続編って要るかなぁ〜と前から考えてはいるんですが、
どれだけ練ってもコメディっぽくしかならなくて困っている。
雰囲気ぶち壊しなので別物っぽい。

以下、書きかけの。
※もちろん本編をお読みになった方にしか判らない内容です。
※繰り返しますが雰囲気はガラリと変わります。

 
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After 0
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何ものもを凌駕するほどの憎しみも、根源たる元凶さえ消え失せればやがて薄れてゆくものだろう。日々の生活を送るという、ただそれだけの生きるにおける行動指針が、気付かぬままに仄かな希望を齎してくれるはずだ。
つまり、仇を討ちさえすれば、スザクの中の蟠りもやがて浄化してゆく。それまでの過程などへの虚しさくらいはあるかもしれないが、優しい世界の出来事がきっと彼を癒し、やがてーーー

ルルーシュはそう思っていた。それこそ、生きる人間の、感情の力だと。
真実を受け入れて、それがどんなに辛いものでも裡に秘め共に生きて行くことを選ぶのも強さだ。だが、忘れることもまだ強さだろうと思う。未練と云ってしまえば美しいが、過去の妄執に囚われることはない。歩んできた道を振り切るのも覚悟が必要だから。

(ーーーだから、)

皇帝と騎士として過ごしているあいだ、自分たちのあいだに多少の情が湧き起こってしまっていることにはさすがに気付いていた。見て見ぬふりはできないほどに。
そういう激情の流れについては、スザクは変化が判りやすい。隠すのが上手くなったと思ったこともあったけれど、やっぱりスザクはスザクだった。まるでルルーシュの方向からやってくる何か恐ろしいものから逃げるように、不意に視線を逸らすことがままあった。そういうときの表情は明らかに辛そうでありながら、本人は無自覚の様子で。
ルルーシュはそれを、スザクの優しさだと判断した。
いろいろなことがーーールルーシュがスザクの傍に居たせいでスザクに起きたいろいろなことがスザクを歪ませてしまったけれど、本来のスザクは真っ直ぐなはずだ。たとえ相手がルルーシュであっても、未だに人を殺すということ自体に抵抗もあるだろう。
けれどきっとスザクは生きる光を見つけて、ルルーシュのことは忘れてくれるだろうと思っていた。流した一滴の血も、広い湖の中に落としてしまえばやがて色など判らなくなる。その喩えで云うところの湖の水が、これからのスザクの人生にはたくさん湧き出てくるから。その中で、きっとこんな不浄の血など薄れてゆく。そういうものだろうと。

(スザク、そのときに、俺はお前と何度目かの、けれど今度こそ本当のサヨナラをーーー)










するはずでは、なかったか。





「あんまり……刺激的なのは良くないと思うんだよね……」

やけに神妙な顔でスザクがひとり頷いている。ルルーシュの方を見てはいるが、その眼差しからして、ルルーシュの返答を求めているわけではないことは判る。だからこそ、ルルーシュは「はぁ…」と気のない返事をした。
のに。

「何、そのやる気のなさは! 僕は君のためにこんなに、こんなに悩んでるっていうのに、ちょっとは協力しようっていう気にはならないの!?」

それこそ、はぁ、と答えるしかない。他に云いようがない。
そんなことはないとでも云えば、じゃあ何、と考えを求められるだろうし、そうだな、と同意でもしてしまえば……後が怖い。
しかしーーーしかし、だ。

「俺にどうしろって云うんだ……」
「あー、そういうコト云うの? そっか、もうゼロは僕に託して一線退いた気でいるんだもんね。酔っ払いの豪商相手に暢気に腰なんか振ってみせちゃってさぁ! 引退した後はアドバイスもする気にならないですか、そうですか」

あーあーあー、と耳をほじりながら呆れたように云われたが、こちらが呆れたい。

「……ゼロは関係ないと思うんだが……」
「あるよ!」
「……何が」
「もう僕はゼロでしかない! ゼロに関すること以外ですることと云えば寝食くらいしかない」

そうだろうか、と頸を捻る。
いや、ルルーシュが見ていた限り、確かにスザクはゼロとして良くやってくれてーーーやりすぎていたとは思う。確かに、スザクという個を殺し、生存活動以外の全ての時間も労力も、恐らくは思考さえも、ゼロに割いていた。それは確かにそうだろうと思うし、ルルーシュが心を痛める所以でもある。
だが……そうだろうか。
この状況においても、スザクはそう云えるのだろうか。
今ルルーシュが相対しているのなんか、思いっきりスザクだ。口調も表情も。しかも、仮面なんかお前どこ置いてきたと聞きたいくらい綺麗に脱ぎ去って、あまつさえ髪のセットまでしておいて。
甚だ疑問に思いながらも、途中で話を遮ると長くなりそうだったので、そうだな、それで? と促す。半笑いになってしまったが構うものか。
すると、スザクは鷹揚と頷いてみせた。

「そんな僕が、ゼロが!」

云い直さなくて良い、と思ったが、やはり黙っておく。

「ナナリー代表を気遣ってるって云うのに!」
「……そうだったのか?」

ルルーシュが目を瞬かせれば、スザクが乗ってきたとでも思ったのか、ふっと厭な感じに笑った。
急に出てきたナナリーの名前に面食らっただけで、さすがにナナリーの名前を出せば何でも騙されるわけじゃないぞと思ったが、まぁそう思わせておいたほうが楽なような気がしたので結局黙っておいた。
どうにもスザクは、ルルーシュが何も変わっていないと思っているーーー思いたがっているらしい。
そんなわけはないだろう、とルルーシュは内心で頸を捻る。7年もあれば人は変わる。なのにスザクがそれを信じようとしないのは、スザクこそが変わっていないということの証なんだろう。それを認めて、ルルーシュはチクリと胸を痛めた。

「だって久々に会う最愛の兄が、そんな卑猥な格好だったらどう思う? 女装をした、美しいお兄様を私も見たいですと云ってたナナリーは喜ぶかもしれない、けどさすがにそれは際どすぎる。だけどだけど、眼福でもあるから、着替えさせるのは勿体ない」

いや、悪いと思っている場合じゃなかった。
真剣な顔で何を語っているのだろうこの男は。

「……俺は、ナナリーに会う気は……」
「此の期に及んでまだそんなこと云ってるの? 君がどんなつもりでもナナリーの前には引き摺り出すから、それはもう諦めた方が心の準備もできて良いと思うよ。だから服装だよ、服装。大事なのは」

前半に突っ込みを入れたかったが、大丈夫僕は判ってるから、とでも云うかのように哀れんだ表情をされて、それが何やらムカついたのでこの場で追求することは遺憾ながらに諦めることにした。
だがだからと云って、突っ込みどころが他にないわけじゃない。

「……服装なんて、そんなに大事か?」
「大事だよ! 素の君をナナリーが目で見るのは初めてなんだよ? トラウマを刺激させない範囲で、でも夢を叶えてあげたいじゃないか」

夢の内容はともかくとして。スザクは良いことを云っているような気はする。
そんなにナナリーのことを考えてくれるなんて、スザクは実は7年のあいだにナナリーへの恋慕を募らせていたりするのだろうか。
それはーーー

(素敵な、ことだと……)

目を細めたルルーシュだったが、しかし。

「かと云ってルル子はなぁ……ちょっとガチすぎるから、実はお姉さまだったのかもしれないって勘違いして混乱させちゃ可哀想だし、あんなレアなのあっさり見せちゃうのも何だし……」
「待て。何の話だ」
「そう云えば男女逆転祭りの写真、まだナナリーに見せてなかったなぁって思っただけだよ」
「見せんでいい!」
「目が見えるようになったら見たいですって、ナナリー云ってたじゃないか。夢を叶えてあげる気はないの?」
「美談にしようとするな。あっ、あんなもの……兄の汚点を見て喜ぶわけがっ…、」
「汚点? どこが? 大体その顔赤らめて視線逸らすとかも、カメラ持ってないときにそういう顔やめてよもったいない!」
「は?」

真剣に意味が判らなくて半眼でスザクを見上げると、何故かスザクはがっかりと肩を落とした。

「切り替え早いね、残念。あー、でもアレも惜しいことしたなぁ。あのアルバム、ペンドラゴンにフレイヤ落とされたときに一緒に消えちゃったからなぁ。一部持ち歩いてて本当に良かったよ」
「持ち歩いてただと!?」
「え? うん。財布に入れて」
「ああスザクくん、お札より写真が多くてぎゅうぎゅうだったものね」
「そう云えばセシルさんにはレシートだと思われて、ちゃんと整理しなきゃって怒られたこともありましたね」
「そうそう、それで、いえ写真ですよってちらっと見せてくれて納得したんだったわ。とっても綺麗で上品な女性だったから、まぁスザクくんたら面食いにも程があるわなんて思ったけど、まさかあれが陛下だったなんて」
「とっておきなんですよ」

えへへ、とスザクとセシルが笑いあっている光景にも喝を入れたい。何故堂々と仮面を脱いでそんな長閑に談笑などしている。
スザクにはやがてゼロとしての重圧から解放されてほしいと思ってはいたので、これは良い傾向なのかも知れない。だがこうあっさりと変わられると今までは何だったんだとちょっと思うところも出てきてしまうわけで、何を何と云ったら、良いのか。
口調が学生の頃に戻ったなと思ったのは、セシルたちが居るかららしい。ルルーシュと話しているときは子供の頃か、あるいは手を取り合ってから過ごしていた時間に近かったのだが。意識しているにしろ無意識にしろ妙に器用だな、と思うが、それもまた今まで殺していたスザクらしさなのかも知れないと思うと複雑だ。
そして何故自分は、スザクに見下ろされつつ正座なんかしているのか。そんな服装、反省して!と喚かれた結果だが何を省みるべきかさっぱり判らない。服装で云うのならC.C.も良い勝負のはずなのに、彼女は似たような服装のままこの光景を目を細めて眺めながら、ピザを貪っているだけだ。ピザはちっとも羨ましくないが、C.C.が身を預けているあのふかふかのクッションはちょっと羨ましい。俺もああいうので休憩したい。何せーーー

(腰が、いたい……)

総てはそこに終着する。
スザクの訳の判らない主張も、この状況も、腰にばかり意識が行ってしまってちっとも頭に入ってこない。もう何でも良ーーーくはないが(写真の件とか)、とっとと話は終わらせたい。
ルルーシュに云わせれば、ナナリーには会わない、この屈辱的な手錠さえ外れたらすぐに着替える、ハイ終わり。
で、済む話なのだが。



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ひとまずここまで。
ブリタニアに帰った後はスザクVSナナリー頂上決戦です。
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